私は今日初めてこの学習院というものの中に這入(はい)りました。もっとも以前から学習院は多分この見当だろうぐらいに考えていたには相違(そうい)ありませんが、はっきりとは存じませんでした。中へ這入ったのは無論今日が初めてでございます。さきほど岡田さんが紹介(しょうかい)かたがたちょっとお話になった通りこの春何か講演をというご注文でありましたが、その当時は何か差支(さしつかえ)があって
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しかしただお断りを致すのもあまり失礼と存じまして、この次には参りますからという条件をつけ加えておきました。その時念のためこの次はいつごろになりますかと岡田さんに伺(うかが)いましたら、此年(ことし)の十月だというお返事であったので、心のうちに春から十月までの日数を大体繰(く)ってみて、それだけの時間があればそのうちにどうにかできるだろうと思ったものですから
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しかしお約束を忘れてはならないのですから、腹の中では、今に何か云(い)って来られるだろう来られるだろうと思って、内々(ないない)は怖(こわ)がっていました。そのうちひょろひょろもついに癒(なお)ってしまったけれども、こちらからは十月末まで何のご沙汰(さた)もなく打ち過ぎました。私は無論病気の事をご通知はしておきませんでしたが、二三の新聞にちょっと出たという話ですから
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